成人式で着るのは何故「振袖」なのか
成人式にドレスコードはありませんが、それでもやっぱり振袖で参加する女の子がほとんどですね。人生のうちに振袖を着る機会というのはそうそう無く限られてますから、せっかくのこの機会に着ておきたいと思う人が多いようです。
ところで皆さんは、なぜ成人式に振袖を着るようになったのかご存知ですか?振袖が着物の一種ということは分かるけれど、なぜ袖が長いのかという理由まではなかなか知らない人も多いと思います。
今回は、そんな振袖の意味について触れていきます。
振袖の起源はいつ、どこで?
振袖がどのようにして発生したのかということには、ふたつの要因があるようです。
まず、振袖の元になったのは振八つ口が開いている子ども用の小袖だとされています。振八つ口というのは、身頃側の袖の端が縫い合わせておらず開いているもののことを指します。これについては、着物とそれに関するエピソードについてまとめられている書籍があるのでご紹介します。
「この振袖——袖振りのあるきもの——はもともとは元服前の、いわゆる子供や少年少女のきものであった。“脇明き小袖”という言葉が示すように、体温の発散がしやすいように身八つ口を開け、袖に振りをつけて仕立てたきものをいう。したがって、多少時代によって異なるが、男子十七歳、女子十九歳までには袖を詰め、脇を塞いで“付詰袖”とするのが当時の風習であった。この付詰袖は“袖留め”または“留袖”ともいい、元服を境にして服装を改め、大人としての自覚をうながすのに役立ったと考えられる。(出典:「きもの歳時記」山下悦子著、15頁より引用)」
引用中で「身八つ口」と呼ばれているのは、身頃の側面を縫い合わせておらず開いているもののことです。
そして、その子ども用の小袖を元として、江戸時代の前期ごろ、若い女性の着ていた正装としての和服の袖丈が次第に長くなっていったというものです。一度に長いデザインとしてつくられたのではなく、徐々に長くしていったようです。なぜ袖を長くしようと考えたのか、その理由もまた諸説あるようですが、舞踊を披露する際に袖が長い方が舞台上で美しく見えると考えられたのではないかと言われています。
以上のふたつの要因が合わさることで、成人する時に振袖を着るようになったのではないかとされています。
「振り袖」の意味って?
振り袖が着物のデザインの一種として定着するにつれて、振り袖にはいろいろな意味が含まれるようになりました。
まず、振り袖は踊り子が舞踊の際に取り入れ始め、のちに「未婚女性の正装」として広まり、定着しました。そして、未婚、つまりまだパートナーのいない女性たちが、踊り子のしていた袖を振るしぐさで愛情などの感情を表現する動きを真似ていたそうです。主なものは、
・ 袖を振ること=愛情があることの表現
・ 袖にすがる=哀れみを請う表現
・ 袂を左右に振る=求婚を受け入れる表現
・ 袂を前後に振る=求婚を拒否する表現
などです。現在も恋愛において求愛を拒否することを「振る」、拒否されることを「振られる」と言いますが、これも振り袖が発端となった言い回しということです。
ちなみに、既婚女性はもう袖を振る必要がないということから、袖の丈を短く詰めて留袖にしていました。留袖にすることで既婚をアピールするというのは、なんだか現在の結婚指輪のようですね。
また、日本では古来より「振る」という行為に、厄を払ったりする呪術的な意味があるとされてきました。よって、人々は振り袖を着ることによって好きな人に振り向いてもらえるように祈願していたそうです。いつの時代も多くの人が、恋愛のこととなると神の力を借りたくなるようですね。
まとめ
今回は「振袖」を着る理由とその意味についてご紹介しました。
成人式といえば振袖だ!とたくさんの人が何気なく着ている振袖ですが、実はたくさんの意味を持ったものであることが分かりました。振袖を着る時に、これらの意味を少しでも思い出しながら着てもらえればと思います。